名古屋地方裁判所 昭和51年(わ)1095号 判決 1976年10月04日
本籍
名古屋市中区門前町五〇二番地
住居
名古屋市中区門前町五番四号
会社役員
大矢ふさ子
明治四一年九月二四日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官加藤芳隆出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役八月及び罰金一、〇〇〇万円に処する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、名古屋市中区門前町五番四号において仏壇製造販売業大矢仏壇店を営む大矢仁三郎の妻であり、同店の専従者として経理事務全般を掌理統括していたものであるが、右大矢仁三郎の業務に関し、同人の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外する等の方法で得た収入を架空名義で預金する等の不正な方法により、所得の一部を秘匿したうえ
第一、 昭和四八年分の実際課税所得金額は三九、三五六、〇三九円であり、これに対する所得税額が一九、八一七、四〇〇円であるのにかかわらず、昭和四九年三月一五日、名古屋市中区三の丸三丁目三番二号所在名古屋中税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一二、五〇三、三八九円で、これに対する所得税額が四、一一九、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、右不正の行為により正規の所得税額との差額一五、六九八、四〇〇円をほ脱し
第二、 昭和四九年分の実際課税所得金額は四四、五七八、三六七円であり、これに対する所得税額が二一、六八八、二〇〇円であるのにかかわらず、昭和五〇年三月一五日、前記名古屋中税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一〇、八九四、七四七円で、これに対する所得税額が二、七七〇、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、右不正の行為により正規の所得税額との差額一八、九一七、八〇〇円をほ脱し
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 収税官吏の被告人に対する各質問てん末書
一 被告人作成の各上申書
一 大矢哲雄の検察官に対する供述調書
一 収税官吏の大矢哲雄、大矢仁三郎、北川瑞代、赤坂真一、関和子、脇田勝正、安藤金次、内藤精市、川瀬輝房に対する各質問てん末書
一 相川勝美、溝口春一、浅野賢一郎、鈴木義邦、太田伸幸、奥村武志、桜井武夫、佐藤忠明、佐藤智子、杉本隆男、市川義光、中島しげ子、比田道幸、平野吉十郎、松原正夫、松尾庄吉、山中英吉作成の各回答書
一 鈴木平治、堀場賢三、三浦孝一作成の各上申書
一 小管金治、関和子、河原崎雄之介作成の各証明書
一 収税官吏作成の各調査報告書
一 大蔵事務官作成の証明書(所得税の青色申告の承認取消し通知書写添付)
判示第一の事実について
一 大島信子、名口照己、玉野広子、住田義雄作成の各回答書
一 収税官吏の山内勝美に対するてん末書
一 大蔵事務官作成の証明書(昭和四八年分の所得税の確定申告書写添付)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(昭和四八年分)
判事第二の事実について
一 下方留治、木村文子、武田義孝、安田文勇、安井清作成の各回答書
一 大蔵事務官作成の証明書(昭和四九年分の所得税の確定申告書写添付)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(昭和四九年分)
(法令の適用)
一 判示各所為について 所得税法二四四条一項、二三八条一項、二項(懲役及び罰金を併科する。)
二 併合罪の加重について 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項(懲役については犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期、罰金については判示各罪の罰金を合算した金額の各範囲内で処断する。)
三 懲役刑の執行猶予について 同法二五条一項
四 労役場留置について 同法一八条
(裁判官 伊沢行夫)